内容紹介
熊沢蕃山は,陽明学の中江藤樹の学問を出発点としたが,藤樹の学問が心の内面に向き合い人格の修業を積む,静の学問であったのに対し,蕃山の学問は行動的で実際的であった。蕃山は,岡山藩池田光政の庇護下,自らの学問を実際に生かすべく,農業や教育の分野で種々の改革を行うが,彼の思想は幕府に危険思想と見なされ不遇の生涯を閉じた。蕃山の生涯と思想を現代の課題を踏まえつつ具体的に描く。
目次(内容と構成)
第一編 熊沢蕃山の生涯
第一章 生い立ちとその足跡
熊沢蕃山という呼び名/蕃山の生い立ち/池田光政に仕える/近江に帰る/近江での蕃山/中江藤樹門下となる/岡山藩に再び仕官/岡山藩政と蕃山/藩内外での排斥/隠居と蕃山村での隠棲/岡藩と蕃山/京都に居を移す/京都、そして吉野、鹿背山へ/明石、大和郡山へ/古河での最期
第二章 岡山藩政と熊沢蕃山
池田光政の儒教政策と池田家墓地の改葬/蕃山と津田永忠/藩学校の整備/手習所の設置と閑谷学校/百間川の設置と水害・飢饉対策
第二編 熊沢蕃山の思想
第一章 現実社会との関わり
中江藤樹との出会い/蕃山の学問/理想の社会/教育・教化/武士の土着論/水土論と山林保護
第二章 熊沢蕃山の著作
『大和西銘』/『葬祭弁論』一巻/『源氏外伝』/『集義和書』一六巻と『息先生道談』一巻/『集義外書』一六巻/『中庸小解』二巻と『論語小解』八巻/『女子訓』/『三輪物語』八巻/『大学小解』一巻と『繁辞伝』二巻/『孝経小解』二巻と『孝経外伝或問』四巻/『大学或問』二巻/『夜会記』四巻/『易経小解』七巻/その他の著作
第三章 熊沢蕃山の日本観、そして趣味
蕃山の中国観、日本観/蕃山の音楽観/蕃山と日本古典/歌学と蕃山
第四章 熊沢蕃山とSDGs
目標一「貧困をなくそう」/目標二「飢餓をゼロに」/目標四「質の高い教育をみんなに」/目標五「ジェンダー平等を実現しよう」/目標八「働きがいも経済成長も」/目標一五「陸の豊かさを守ろう」
結びにかえて
あとがき
熊沢蕃山関係年譜
参考文献
さくいん