新課程FAQ

先生方にお寄せいただくことの多い質問を踏まえて,新課程関連の疑問や不安を解消できる情報を掲載しています。

01歴史総合編

  • 「歴史総合」はカリキュラムとして、何年次に設定するのが適切でしょうか?

    進学校の場合は、現行課程で現代社会を1年次に置く高校が多いことから、教科間で時間の取り合いになる恐れがあります。まず、進学を重視する生徒の立場に立つなら、下記が、妥当な編成でしょう。

    ・1年次 「歴史総合」「地理総合」
    ・2年次 「公共」
    ・2~3年次 選択の「日本史探究」「世界史探究」「地理探究」
    ・3年次 選択の「倫理」か「政経」

  • 現行課程の科目である「世界史A」「日本史A」の共通点と相違点を教えてください。

    共通点の第一は、どちらも近現代史に重点を置いている点です。ただし、世界史Aのように、近現代史の理解のために、その背景となる前近代史についても学ぶという方式はとらず、日本史Aのように大胆に前近代史の内容はカットします。
    共通点の第二は、当然のことながら近現代史に関する知識の内容です。
    次に、相違点の第一は、近現代史の通史的・年代史的学習ではなく主題的学習になることです。世界史Aや日本史Aにも主題的学習はありましたが、それは通史的学習の補完的位置付けでした。しかし、歴史総合には通史的学習はなじみません。全てが主題的学習と考えた方がよいです。
    相違点の第二は、主題的学習になることから、教科書の内容が多様化することです。
    その結果、従来のように要約して板書するような授業が成り立たなくなるでしょう。
    生徒が、知識を習得し構成できるように資料を提示し、「問いかける」のが教師の役割になります。学びのプロセスを重視するながれになっています。

  • 歴史総合では、‘戦後史’をどのように捉えるべきでしょうか?

    まず確認すべきは、歴史総合は通史的学習を想定していないということです。現行の日本史A・Bや新設の日本史探究と異なり、第二次世界大戦の終結を以て時代区分をしていません。したがって、敢えて戦後史の枠組みにとらわれず、現代の私たちが直面する課題の解決という観点から、第二次世界大戦の出来事を位置付けて探究すべきでしょう。

  • 定期テストの作問や、観点別となる評価において、心がけるべきことは何でしょうか?

    まず、目標としての資質・能力が、
    ①知識・技能
    ②思考力・判断力・表現力等
    ③学びに向かう力・人間性等
    に整理されたことを踏まえ、これら三つの観点から指導と評価を考える必要があります。
    次に、観点別評価の一般的留意点を挙げれば、以下のようになります。

    ③については、観点別評価になじまないとの理由から、目標となる評価基準では「主体的に学習に取り組む態度」として記述し、評価します。
    ①について、知識は用語の理解、技能は資料の読解と分けて考えるのではなく、資料の読解を通して事象を理解しているかどうかを評価します。
    同様に②の思考力・判断力も表現してみなければ他社には中身が伝わりませんので、「思考力・判断力・表現力」として一体的に捉えることが必要です。

  • 共通テストに向けて、歴史総合ではどのように学習を進めればよいでしょうか。留意すべきことは何でしょうか?

    出題科目の組み合わせに関わりなく、歴史総合の趣旨を生かした学習を進めることが結局は共通テスト対策になるでしょう。
    2025年度の共通テストサンプル問題を例に説明しますと、第一に、出題形式に惑わされず、問題文をよく読めば近現代史の基本的知識を問うていることがわかります。ただし、資料のない問題はありませんので、日頃から資料に慣れさせておくことが必要です。
    第二に、言うまでもなくグローバル化の時代も出題範囲ですので、少なくとも冷戦終結後の21世紀初頭くらいまでは確実に学習しておくことが必要でしょう。
    第三に、世界史B・日本史Bの近現代史以上に、日本と世界を関連付けた出題があることです。特別な試験対策を講じるより、日頃から日本と世界を大きな問いの下で比較したり関連付けたりする学習をさせることが有効だと言えるでしょう。

02公共編

  • 新科目「公共」とはどのような科目で、どんな目標があるのでしょうか?

    「公共」は「現代課題の諸課題」をその内容として位置づけている科目になります。
    目標としましては、知識及び技能を得ることを第一の目標とし、思考力・判断力・表現力等を得ることを第二の目標としています。最後に、現代社会の諸課題を主体的に解決しようとする態度等(学びに向かう力、人間性等)が得られるようになることが第三の目標となります。

  • 「現代社会」「倫理」「政治・経済」との共通点と相違点を教えてください。

    共通点は、3科目とも「概念や理論」の習得を重視するということです。ただし、今回の学習指導要領では、同じ「理論や概念」でも、特に、「現代社会の諸課題の解決に向けて」その「手掛かりとなる理論や概念」の習得を重視しています。
    相違点については、「大項目A 公共の扉」の学習で、例えば、最大多数の最大幸福としての「幸福」の考え方の習得を求めています。その扱い方として、ベンサムとミルの功利主義の説明を行うことで、「幸福」の考え方を説明し、「思考実験」として「トロッコ問題」を取り上げることで、功利主義の考え方を理解できるように工夫できます。
    このような「現代社会の諸課題の解決に向けて」重要になる倫理的な理論や概念の取り上げ方は、従来の「倫理」とは異なるアプローチとなっています。

  • 定期テストの作問や、新しくなった観点別評価において心がけるべきことは何でしょうか。

    主要な「概念や理論」の習得はこれまでも重視しています。この件については従来と変わらず必要でしょう。
    他方で、新科目「公共」ではテーマ学習を重視しています。「知識」については、これまでのペーパーテストと同様でよいという言い方もできるでしょう。
    しかし、「技能」については、「調べ、まとめる技能」を評価するので、説得力のある情報を、複数の資料から照らし合わせながら収集できるのか、出典や発信者の立場や意図を踏まえてまとめているのか、といった点が評価のポイントになるでしょう。
    次に、「思考・判断・表現」については、事実を基に、概念などを活用して多面的、多角的に考察・構想することができているかが評価のポイントになってきます。
    最後に、「主体的に学習に取り組む態度」については、解決しようとしている状況を評価し、それが現代の諸課題であること、ということになります。

  • 大学入学共通テストでは「公共」はどのように扱われるのでしょうか?

    「公共」のサンプル問題を参照すると、まず「知識の説明」があり、その内容を踏まえた上で、どのような活動が考えられるのか、といった「活用」を意識した問題が出題されています。具体的には、「エシカル消費」の定義が示された後で、「エシカル消費」の具体的な取り組みを選択できるのかが問われたということです。このような問題は、「理論」の理解力と社会への「活用」力を問う問題と言えます。